人前に出ると「恥ずかしい思いをするのではないか」と不安や緊張してしまうことは誰もが経験したことがあるでしょう。

通常であればそれはごく自然なことなのですが、社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)は、人からどのように見られているのかを必要以上に気にしてしまう病気で、不安や緊張の度合いが大きく紅潮や発汗、ふるえ、腹痛などの症状が現れる場合があります。

また、このような症状がまた出てしまうのではないかという不安が強くなって、人が集まる場所を避けるようになります。その結果、学業や就業、さらには結婚などの社会生活に大きな問題を抱えてしまいます。以前は対人恐怖・視線恐怖・赤面恐怖などと呼ばれることの多かった状態の総称です。

社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)の症状

社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)には以下のような状況が耐え難く、上記のような精神・身体症状が起こり、そのような状況をできるだけ避けようとすることが特徴です。

  • 会議中(特に自分の報告・発表など)
  • 人前で何かをする時
  • 上司やあまり面識のない人との会話の時
  • 試験や仕事の面接を受けている時 など

社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)の原因

社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)の原因はまだはっきりとわかっていませんが、恐怖症状を抑える働きのある神経伝達物質であるセロトニンのバランスが崩れ、神経が過敏な状態に置かれるからではないかといわれています。

その要因としては、過去に人前で恥ずかしい経験をしたことがあるなどの経験的要因、他人の目を気にしすぎる、人見知りなどの性格的要因、また遺伝的な要因が挙げられています。

社交不安障がいの治療

社交不安障がい(社会不安障がい、SAD)は、脳内の神経伝達物質セロトニンのバランスが崩れることによって起きるものと考えられていますので、治療には脳の機能を調整する薬物療法や、認知行動療法などの心理療法が有効です。

薬物療法

薬物療法では、主に抗不安薬を用います。お薬の効果は飲み始めてから、比較的早く出てきますが、この時点で服用を止めてしまうと、再発の可能性が高まります。症状が出なくなっても自己判断をせず、医師の指示に従ってお薬の服用を継続することも大事です。

心理療法(認知行動療法)

心理療法のなかでは、不安や恐怖に向き合えるよう医師や臨床心理士の力を借りて行う認知行動療法が効果的です。不安を抱きやすい考え方のパターンを変えたり、不安の対処法を工夫したり、不安に慣れる訓練を行います。