適応障害の治療は、個々の症状、状況、及びストレスの原因に基づいて行われます。この障害は特定のストレス要因に起因するため、治療の目的はそのストレス要因に対処し、適応能力を向上させることにあります。以下は、適応障害の治療に一般的に用いられる方法です:
1. 心理療法
- 認知行動療法(CBT):否定的な思考パターンを認識し、それをより現実的かつ建設的な思考に置き換える手法です。
- 対人関係療法(IPT):人間関係の問題を解決するのに焦点を当てます。
- 支持的療法:患者の感情を理解し、サポートすることに重点を置きます。
2. 薬物療法
- 適応障害自体を直接治療する薬はありませんが、不眠、不安やうつのような特定の症状が強い場合、短期間の間、睡眠薬、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがあります。
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適応障害で使われるお薬とは?
適応障害では、困っている症状を軽減するためのお薬を使っていきます。咳が出たら咳止め、頭痛がするならば痛み止めといった風邪の時のように、症状に合わせて処方されます。
不安や緊張が強いとき
- 抗不安薬
メイラックス、ワイパックス、ソラナックス、レキソタン、デパス、リボトリール、リーゼ、セディールなど
いわゆる精神安定剤などといわれているお薬です。
1日効果を持続させた方が良い場合は、メイラックスなどが使われることが多いです。筋肉の緊張が強い場合は、デパスやレキソタン、リボトリールなどが使われることが多いです。
抑うつが強いとき
- 抗うつ剤
ドグマチール、ジェイゾロフト、レクサプロなど
一時的なサポートでよい場合は、ドグマチールが良く使われます。もともとは胃薬として作られたお薬になります。
以下のような場合、ジェイゾロフトやレクサプロといった抗うつ剤を長期的に使われることもあります。
- うつ状態が深い場合
- 環境が変えられず、症状が続くことが予想される場合
- 不安障害などが背景に認められる場合
不眠がみられるとき
- 睡眠薬
マイスリ―、アモバン、レンドルミン、ベルソムラなど
睡眠薬は様々な種類が発売されています。不眠の状態に適したお薬が使われます。
イライラが強いとき
- 漢方薬
抑肝散など - 気分安定薬
デパケンなど - 抗精神病薬
ルーラン、ジプレキサ、セロクエル、リスパダールなど
興奮を抑える抑肝散といった漢方薬や、気分安定薬に分類されるデパケンなどが使われます。
- 抗不安薬
3. セルフケアとライフスタイルの変更
- ストレス管理:リラクゼーション技法(瞑想、深呼吸、ヨガなど)を習慣化します。
- 適切な休息と睡眠:身体と心の健康を維持するために十分な睡眠を取ります。
- バランスの取れた食事:栄養豊富な食事が全体的な健康に寄与します。
- 定期的な運動:身体活動はストレスを軽減し、気分を改善するのに役立ちます。
4. 社会的サポート
- 家族療法:家族とのコミュニケーションを改善し、家庭内のサポートを強化します。
- サポートグループ:同じような経験を持つ人々との交流が、ストレスや孤立感の軽減に役立ちます。
5. 環境調整
- ストレス要因となっている環境要素(仕事のストレス、人間関係の問題など)に対処し、必要に応じて変更することが有効です。
- ストレスの原因が仕事にあるとはっきりわかっているなら、仕事を休んだ方がいいかどうか悩む人も多いと思います。ですが適応障害の場合、その環境を避けるだけでは根本の解決にならず、仕事を休んだことでかえって復職が難しくなったり、周囲との関係がギクシャクしてしまったりするケースもあるので、慎重な判断が大切です。
職場で環境調整のご相談をしていく場合は、以下のようなステップがあります。
- 上司に相談する
- 人事や総務などを利用する
- 産業医に相談する
- 病院で診断書をもらう
どのような方法が適切なのか、それは患者さんごとに異なります。患者さん本人だけでは難しいですので、医師と相談の上、病気の状態や職場環境などを十分に考慮し、検討することが望ましいです。こころの病気については、昔に比べればずっと社会的認知度も上がってきているとはいえ、十分な理解を受けていると言えるほどの状況ではなく、体の病気と比べると職場や周囲への対応は難しい部分もあります。患者さんそれぞれの病状・職場環境・生活状況などで、臨機応変に対処することが大切となります。
適応障害の治療は、個々のニーズに応じてカスタマイズされるべきです。また、治療は患者自身の協力と積極的な参加が必要で、症状の改善には時間がかかることがあります。重要なのは、必要な場合には専門家の支援を求めることと、治療プロセスに対する忍耐です。