こんにちは。プライベートクリニック恵比寿の院長、美山承哲です。
今回は、2023年11月に米国FDA(食品医薬品局)、2024年に日本の厚生労働省から承認された新しい痩身治療薬 ゼップバウンド(Zepbound) について、医師の視点からアカデミックな情報を交えてご紹介いたします。
🔸こんな方に適しています何をしても痩せにくい
- 何をしても痩せにくい
- 糖代謝やインスリン抵抗性に問題がある
- 長期的にリバウンドせず体質改善をしたい
- 外科手術は避けたいが高い効果を求めている
🔬 ゼップバウンドの有効成分と作用機序
ゼップバウンドの有効成分は チルゼパチド(tirzepatide) です。
この成分は、GIP(胃抑制ポリペプチド)受容体およびGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体のデュアルアゴニストとして機能します。
✅ GIP & GLP-1のダブル作用
- GLP-1受容体刺激
→ インスリン分泌の促進、胃排出遅延、食欲抑制 - GIP受容体刺激
→ インスリン感受性の向上、エネルギー代謝の改善
この 「ダブルインクレチン作用」 によって、従来のGLP-1作動薬よりも高い減量効果が得られるとされています。マンジャロと同じ有効成分です。
🔬 ゼップバウンド(チルゼパチド)の作用機序
ゼップバウンドの有効成分であるチルゼパチドは、GIP(胃抑制ポリペプチド)およびGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)のデュアル受容体作動薬です。これにより、以下のような多面的な効果が期待されます。
- インスリン分泌の促進:血糖値の上昇に応じてインスリンの分泌を促進し、血糖コントロールを改善します。
- 胃排出の遅延:食後の胃内容物の排出を遅らせることで、満腹感を持続させ、食欲を抑制します。
- 食欲の抑制:中枢神経系に作用し、食欲を抑える効果があります。
- エネルギー代謝の改善:脂肪組織への作用により、エネルギー消費を促進し、体重減少をサポートします。
このような複合的な作用により、従来のGLP-1単独作動薬よりも高い減量効果が期待されています。
📊 SURMOUNT-1試験の詳細結果
2022年に発表された第3相臨床試験「SURMOUNT-1」では、肥満または過体重の成人(糖尿病を有さない)を対象に、チルゼパチドの効果と安全性が評価されました。
主要評価項目:72週後の体重変化率
用量 | 平均体重減少率 | 20%以上の体重減少を達成した割合 |
---|---|---|
5mg | 15.0% | データ未公開 |
10mg | 19.5% | 50% |
15mg | 20.9% | 57% |
プラセボ | 3.1% | 3% |
(出典:New England Journal of Medicine, 2022)
副次評価項目
- 体重5%以上の減少を達成した割合:
- 5mg群:85%
- 10mg群:89%
- 15mg群:91%
- プラセボ群:35%
- 心代謝リスク因子の改善:
- 血圧、空腹時インスリン値、HbA1cなどの指標において、有意な改善が認められました。
副作用
- 主な副作用:悪心、下痢、便秘などの消化器症状が報告されています。
- 重篤な副作用:稀に膵炎や胆嚢疾患が報告されていますが、発現頻度は低く、注意深いモニタリングが推奨されます。
📈 3年間の長期効果:体重維持と糖尿病予防
SURMOUNT-1試験の延長研究では、チルゼパチドの長期的な効果が評価されました。
- 体重維持:参加者の73%が、3年間で体重の5%未満しか再増加しませんでした。
- 糖尿病予防:前糖尿病状態の参加者において、チルゼパチドは2型糖尿病への進行リスクを94%低下させました。Verywell Health
(出典:Verywell Health, 2025年4月17日)
🧪 用法・用量と適応
- 投与方法:週1回の皮下注射。
- 開始用量:2.5mgから開始し、4週間ごとに漸増。
- 最大用量:15mgまで増量可能。
日本での適応
2024年に厚生労働省より承認され、以下の条件を満たす成人が対象となります。
- BMIが27以上で、高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有する場合。
- BMIが35以上の場合は、合併症の有無に関わらず適応となります。
🏥 当院での取り組み
当院では、ゼップバウンドを用いた肥満治療において、以下のような包括的なアプローチを行っております。
- 個別化医療:患者様一人ひとりの健康状態やライフスタイルに合わせた治療計画を策定します。
- 多職種連携:医師、栄養士、運動指導士が連携し、食事・運動・心理的サポートを提供します。
- 継続的なモニタリング:定期的な診察と検査により、治療効果と安全性を評価し、必要に応じて治療計画を調整します。
✍️ まとめ
ゼップバウンドは、これまでの肥満治療の常識を変える可能性を秘めた新薬です。医学的エビデンスに基づき、安全に、効果的に、そして長期的な体質改善を目指す方にとって、非常に有効な選択肢となるでしょう。
