結論(要約):肥満症の薬物療法の中で体重減少量は最上位クラス。2025年に公表された直接比較試験でもセマグルチド2.4 mgより有意に大きい減量を示しました。継続投与で維持できやめると再増加しやすい点もRCTで確認されています。日本では最適使用推進ガイドラインが定められています。適切な選択と並走が鍵です。ニューイングランドジャーナルオブメディスン+1PMC田辺三菱製薬株式会社
1)「どのくらい痩せるの?」—量的効果
- SURMOUNT-1(NEJM, 2022):糖尿病のない肥満・過体重者で、72週時 −20.9%(15 mg群)という平均体重減少。20%以上の減量達成は10/15 mg群で半数超。ニューイングランドジャーナルオブメディスンPubMed
- SURMOUNT-5(NEJM, 2025):セマグルチド2.4 mg (オゼンピック、ウゴービ、リベルサスなどの主成分)vs チルゼパチド(ゼップバウンド、マンジャロなどの主成分)の頭頭比較。72週でセマグルチドより有意に大きい減量(概ね約20% vs 約14%)。15%以上・20%以上の達成率もチルゼパチドが上回りました。ニューイングランドジャーナルオブメディスン+1
補足:既存のネットワークメタ解析や観察研究でも、両薬とも強力だがチルゼパチドが一歩リードという傾向は一貫しています。PMC+1
2)「続ければ維持できる?」—維持と再増加のデータ
- SURMOUNT-4(JAMA, 2024):36週の導入後に継続群 vs 偽薬切替群を比較。継続群はさらに減量、中止群は有意な体重再増加。**“続ける価値”と“やめれば戻る”**の双方が示されました。PMC
3)「生活習慣介入と相性は?」—相加効果
- SURMOUNT-3(Nat Med, 2023):12週間の集中的生活介入で≥5%減量できた方を対象に**+チルゼパチドでさらに−21%**の追加減量、**総減量−26.6%に。“やるほど効く”という結果です。Nature
4)「他の薬と比べると?」—相対的位置づけ(ざっくり)
- リラグルチド3.0 mg:平均5–8%。
- セマグルチド2.4 mg:平均12–15%。
- フェンテルミン/トピラマート:**8–10%**前後。
- ナルトレキソン/ブプロピオン:**4–6%**前後。
- オルリスタット:**約3%**程度。
PMCWiley Online LibraryAmerican Gastroenterological Association
5)適応の広がり:**OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)**にも
米国では中等度〜重症OSAを合併する肥満成人に対してZepboundが適応取得(2024年12月)。無呼吸イベントの減少などが根拠です。減量薬から合併症治療薬へ、という広がりを示します。U.S. Food and Drug Administration
6)日本での承認・保険適用と使い方(重要)
- 承認:2024年12月に日本で肥満症として承認。
- 最適使用推進ガイドラインの対象で、施設・医師要件、栄養指導体制などが定められています。
- 用量:週1回皮下注。2.5 mgで開始し、4週ごとに2.5 mgずつ段階的に増量、最大15 mg。患者さんの状態に応じて5–15 mgで維持します。田辺三菱製薬株式会社
当院はガイドラインの趣旨に沿って適格性を丁寧に判定し、生活習慣支援と有害事象のモニタリングをセットで行います。
7)安全性:よくある副作用と注意点
- 消化器症状(吐き気・下痢・便秘など)は最も一般的。通常は用量漸増で軽減。pi.lilly.com
- 胆嚢疾患(胆石・胆嚢炎)や急性腎障害はまれに報告。pi.lilly.com
- 膵炎:臨床試験・メタ解析では明確な増加は示されていない。PMC
- 甲状腺C細胞腫瘍リスク(動物):MTCの既往・家族歴、MEN2(甲状腺腫瘍の一種)の方には禁忌。pi.lilly.com
- 併用薬:胃排出遅延の影響で経口薬の吸収が変わる可能性。pi.lilly.com
8)プライベートクリニック恵比寿での進め方(初診〜フォロー)
- 初診:既往歴・服薬・合併症・睡眠・食行動・体組成を評価。
- 適格性判定:安全性の観点から、薬物以外の選択肢も含めて共同意思決定。田辺三菱製薬株式会社
- 導入:2.5 mg/週で開始し、4週ごとに増量。**副作用は減速できる設計で無理をしません。pi.lilly.com
- 生活習慣支援:SURMOUNT-3の通り、生活介入の併用で効果が上乗せされます。栄養・行動・運動をチームで。Nature
- 維持戦略:SURMOUNT-4の知見を前提に、中長期継続と中止時の再増加リスクを事前共有。PMC
9)よくある質問
Q. どれくらいの期間でどのくらい痩せますか?
A. 個人差はありますが、1年〜1年半で10–20%前後の減量が目標値です(試験では20%超も一定割合)。ニューイングランドジャーナルオブメディスン
Q. セマグルチド(ウゴービ、リベルサスなど)と比べると?
A. 頭頭比較(72週)でチルゼパチド(ゼップバウンド)が有意に上回る結果でした。どちらも有効ですが、目標と副作用・通院状況で選びます。ニューイングランドジャーナルオブメディスン
Q. やめたら戻りますか?
A. 戻りやすいです。継続投与でダイエットが維持しやすいことが示されています。PMC
Q. 睡眠時無呼吸にも効きますか?
A. 米国ではOSA適応が承認されています。日本では肥満症の範囲での適用です(OSAは肥満関連疾患の一つに位置づけ)。U.S. Food and Drug Administration田辺三菱製薬株式会社
10)プライベートクリニック恵比寿 院長美山のメッセージ

「ゼップバウンドは、2025年で厚生労働省承認の最も効果的な痩身薬剤の一つです。薬 × 生活習慣 × 見守りの三本柱で、無理なく、安全で確実なダイエットを目指します。体重計の数字だけでなく、‘暮らしの質’が上がったと言っていただけることが、当院のゴールです。」
主要出典(抜粋)
- NEJM(SURMOUNT-1):72週で平均−20%前後。ニューイングランドジャーナルオブメディスン
- NEJM(SURMOUNT-5):チルゼパチドがセマグルチド2.4 mgに優越。ニューイングランドジャーナルオブメディスン+1
- JAMA(SURMOUNT-4):継続で維持、中止で再増加。PMC
- Nat Med(SURMOUNT-3):生活介入+薬で上乗せ効果。Nature
- FDAプレス:OSA適応承認。U.S. Food and Drug Administration
- 日本(NHI収載・適用条件・用量):エリリ・三菱UFJファーマ共同リリース。田辺三菱製薬株式会社
- US添付文書:用量漸増・禁忌・注意。pi.lilly.com
- 安全性メタ解析(膵炎・胆嚢):有意な増加は示さず。PMC
