【医師解説】肝斑におけるトラネキサム酸+ビタミンC皮内注射は効果があるのか?

シミ・そばかす

肝斑は、治療が難しく再発しやすい色素性疾患の代表です。内服、外用、レーザー、ピーリングなど多くの治療法がありますが、「これだけで治る」という万能な治療は存在しません。近年、世界的に注目されている治療の一つがトラネキサム酸(TA)とアスコルビン酸(ビタミンC)の皮内注射(マイクロインジェクション)です。今回は、2022年に国際医学誌に掲載された分割顔面・二重盲検ランダム化比較試験をもとに、この治療の有効性・安全性・限界について解説します。


肝斑とは?

肝斑は、主に30〜50代女性、両頬・額・口周りなどに左右対称に出現、紫外線、ホルモン、妊娠、経口避妊薬、ストレスなどが関与する慢性かつ再発しやすい色素疾患です。美容上の問題にとどまらず、QOL(生活の質)を大きく低下させることが知られています。


トラネキサム酸(TA)が肝斑に効く理由

トラネキサム酸はもともと抗線溶薬ですが、

  • プラスミン活性抑制
  • メラノサイト刺激因子の抑制
  • 紫外線による色素沈着の抑制

といった作用により、肝斑改善効果が確認されています。経口・外用・皮内注射と、世界中でさまざまな方法が研究されています。


ビタミンC(アスコルビン酸)の役割

ビタミンCは、

  • メラニン生成に必要な銅イオンのキレート
  • 抗酸化作用
  • 色素還元作用

を持ち、肝斑治療では古くから使われてきました。ただし外用では浸透が弱いという欠点があります。


今回の研究の概要(重要)

研究デザイン

  • 前向き/二重盲検/分割顔面ランダム化比較試験

対象

  • 18〜50歳女性 左右対称の肝斑患者 24名

治療内容

  • 片側顔面:トラネキサム酸 50mg/ml + ビタミンC 50mg/ml 皮内注射
  • 反対側顔面:トラネキサム酸 50mg/ml + プラセボ
  • 2週間ごとに計12週間施行

症例写真

同患者の写真:(A)治療前(B)トラネキサム酸とプラセボによる治療後(C)治療前(D)トラネキサム酸とビタミンCによる治療後

PMCID: PMC8905661 PMID: 35284654より

同患者の写真:(A)治療前(B)トラネキサム酸とプラセボによる治療後(C)治療前(D)トラネキサム酸とビタミンCによる治療後

PMCID: PMC8905661 PMID: 35284654より

✅ 有効性

  • 両群ともMASIスコアは改善
  • 8週・12週時点でTA+ビタミンC群が有意に優れていた。改善効果は治療終了後3か月持続

「トラネキサム酸単独よりも、ビタミンC併用の皮内注射の方が効果が高い」という結果です。


⚠️ 副作用・デメリット

  • 全例で注射時の痛み・灼熱感/ビタミンC併用群は痛みが有意に強い ※ 重篤な副作用は報告されていません。

この研究から言えること・言えないこと

言えること

  • 世界的にも肝斑に対するTA+ビタミンC皮内注射は実際に研究されている
  • 内服や外用とは異なるアプローチとして有望

言えないこと

  • 万人に効く治療ではない
  • 単独治療で完結するわけではない
  • サンプル数は多くない(24名)

自由診療としてどう考えるべきか

自由診療は「エビデンスが100%完成していなければいけない」わけではありません。重要なのは、科学的合理性があるか、世界的に研究・臨床実績があるか、リスクを説明した上で選択肢として提示しているかです。本治療は、内服が使えない方や日焼けしやすいほうや外用で刺激が出やすい方/レーザーに抵抗がある方にとって、選択肢の一つになり得る治療と考えられます。


当院のスタンス

当院では肝斑治療を内服、外用、皮内治療、スキンケア・紫外線対策を組み合わせて行う「総合治療」として考えています。皮内注射も、その中の一つの治療として位置づけています。


まとめ

  • トラネキサム酸+ビタミンC皮内注射は国際的にも研究されている肝斑治療
  • TA単独より効果が高い可能性
  • 痛みはやや強いが、重篤な副作用は報告されていない
  • 自由診療として「理にかなった選択肢」

肝斑治療は「正解が一つ」ではありません。患者様一人ひとりに合った治療を一緒に考えていくことが最も大切です。

トラネキサム酸orビタミンC 皮内注射 13,980円

トラネキサム酸+ビタミンC 皮内注射 18,980円

2週に1回,3ヶ月程度を目安とお考えください。

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